藤本みさえさんのお話を聞いた。昔話や物語は、どこかにちゃんと、「人間がどう生きるか」のようなエッセンスをちりばめられている。おはなしの先がなんとなく分かっていても、それが藤本さんのことばで語られると、色や形がぶわっとリアルに浮かんで迫ってくるのだから不思議だ。
この頃たくさんの方のお話を聴く機会に恵まれている。そういう場所に行くと不思議と時間がゆっくり流れる感じがする。語り手の人の口調は決まって穏やかだ。淡々としてるのに説得力があって、一言で言うなら深い。
物語を語る合間にこんなおはなしをしてくださった。「幸せって たとえばそれまでとても苦労したからその後になって、ああ幸せだなあって改めて思えるんじゃないかしら。今朝も出来合いのサンドイッチを買って食べていたのだけど、家から無農薬のプチトマトを2つ持ってきたのです。それを口にしたらなんて美味しいんだろうって。サンドイッチの中のトマトとは全然違って味が濃いんです。本当においしかった。でももしかしたら今の世の中、お店で作ったものしか食べたことのない子がいるんですよね。取れたてのものをその場で料理して食べさせてあげるということ大事だなあって思います。この歳になって今更って思うんですけど。」
それから「私を束ねないで」という詩集を紹介してくださった時、私はなんだか顔が赤くなるくらい恥ずかしくなった。いらいらやストレスを人に対して感じること自体、自分の感受性を鈍らせているのだということを思い知ったから。
みんな素敵にいきているのだなあと思う。